仏壇でのろうそくによる熱傷
仏壇のロウソクが衣服に着火してやけどを負うことがあります。
東京都内の重症熱傷(重いやけど)患者を収容している東京都熱傷救急連絡協議会参加施設の集計では、仏壇のロウソクによるやけどはここ数年毎年発生しています(図1)。
仏壇のロウソクによりやけどをする人は、一般のやけどに比べ、仏壇にお供え物をしたりお掃除をしたりする比較的ご高齢の人に多くみられます。よって、糖尿病や動脈硬化などの持病をお持ちであることも多く、これらも関連して治りが悪く、入院治療期間が比較的に長くなってしまいます。また、お供え物やお掃除をする際に袖に火がつくことから、利き腕やわきの下、首に深いやけどを負う危険があり、その場合、手術やリハビリテーションに多くの時間を費やすことになります。そのために、なかなか元の生活に戻ることが難しく、治療中に他の病気を併発してしまう恐れがあります。
このやけどを避けるには予防がもっとも効果的で重要です。
まず、ロウソクをつけたままお供え物をあげたり、奥のものを移動させたり、お掃除をしたりしないよう心がけること、燃えにくい衣類を着用することです。また、ロウソクは本物でなく、ロウソクを型どった電燈にすることを強くお奨めします。
ご自宅に毎日頻回に仏壇にたずさわるご高齢の方がおられる場合は、万が一、衣服の袖に火がついてしまった場合の対応策を検討しましょう。利き腕の袖についた火は目の前で立ち上る炎と煙にあわててしまいなかなか消せないものです。手の届く場所に消火スプレーなどを設置し、操作法を練習しておくことも一法です。
日本人の伝統的な信心深い行動から、あやまってひどいやけどを負ってしまうことは誠に不幸でなりません。私たちもなんとか良くなっていただくように治療に努力しておりますが、なんといっても予防が第一です。東京消防庁の皆さんも小冊子を作成し広報したり、ご自宅を訪問しての啓蒙活動を行っています。ぜひ関心を持ってください。