一酸化炭素中毒


1)
一酸化炭素(CO)は炭素系の素材の不完全燃焼により生じる無色、無臭、空気よりわずかに軽いガスです。わが国でのCO中毒による死亡者は年間約2,000人でその大部分は火災によるものです。最近ガス湯沸かし器による事故が相次ぎ耳にした方も多いと思います。

2)
一酸化炭素中毒が生じるしくみはまだはっきりわかっていませんが、「組織低酸素症」によるとする説が最も説得力があるとされています。血液中の赤血球はヘモグロビン (Hb) に酸素 (O2) を結合させて体のすみずみに運搬する働きを担っていますが、COは酸素よりも約250倍もHbと結合しやすいため、COが体内に入るとHbと酸素の結合を妨げて、COがヘモグロビンと強固に結合してしまいます 。酸素と結合できなくなったHbはからだのすみずみに酸素を運搬する能力が低下し、体の組織は必要な酸素を受け取れず低酸素症に陥ってしまいます。

3)一酸化炭素中毒の症状
  i) 急性型CO中毒
   初期症状は頭痛、吐き気、めまい、倦怠感など感冒様の症状です。血中のCO-Hb濃度が高くなると意識はあるのに徐々に
   体の自由がきかなくなり、その後意識障害を来し呼吸不全、循環不全に陥ります。
  ii) 間欠型CO中毒
   急性型CO中毒の症状が回復した後に症状が再燃し徐々に精神神経症状を来すことがあり「間欠型CO中毒」と言われます。
   発生率は急性CO中毒の5-10%といわれています。急性中毒期に発症を予測することは困難ですが、補助診断として頭部MRIが有効とされています。
   急性中毒から回復後、数ヶ月経過してから発症することもあるので注意を要します。
血中CO-Hb濃度と臨床症状 (Seyers ら: 1923年)

4) 重症度の評価と治療
CO中毒の重症度は吸入した空気中のCO濃度、それに暴露していた時間 [CO濃度 (ppm) X 暴露時間 (時間) ]により左右されます。300-600:軽度、600-900:中等〜高度、1,500:致死的とされています。大気汚染の環境基準では「1日平均値が10ppm以下かつ8時間平均値が20ppm以下であること」とされ、労働安全衛生法では事務所室内のCO濃度は50ppm以下と定められています。
治療の基本は酸素投与によるCOの洗い出しと組織低酸素症状態の組織の酸素代謝の改善です。CO-Hbの消失半減期は大気圧室内空気で4-6時間、100%酸素の吸入で40-80分、高圧酸素療法で15-30分とされています。通常、高濃度酸素治療を6時間以上行います。それでも改善が得られなければ高圧酸素療法を行うことを考慮することもあります。高圧酸素療法に関しては、後遺障害を減少させられるとする報告も見られますが(Weaverら:2002年)、その効果に関しては明確な結論が出ておらず、適応や施行方法も施設により統一されていないのが現状です。また、間欠型CO中毒の発症抑制に対する効果も明らかになっていません。
 CO急性中毒初期には全身の組織酸素消費量を抑えるために安静が必要です。症状が軽快してからも間欠型中毒発症の可能性を考え4週間程度は急激な運動を行わないようにする必要があります。